デジタル化 / IT化という言葉は、今やビジネスの現場で当たり前のように使われています。しかし、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という三つの概念の違いを正確に理解し、自社がどの段階にいるのかを把握している企業は意外と少ないのが現状です。
2024年のIMD国別デジタル競争力ランキングにおいて、日本は未だ31位という結果に終わりました。
この差を埋め、グローバル競争で生き残るため、またそもそも国内の市場にて勝ち残っていくためには、デジタル化の各段階を正しく理解し、戦略的に進めていく必要があります。この記事では、三つの概念の違いと、それぞれのステップにおける具体的な取り組み方、そして最終的なDX実現に向けた内製化の重要性について解説していきます。
デジタイゼーション:アナログからデジタルへの変換
デジタイゼーション(Digitization)は、デジタル化の最も基本的な段階です。これは、アナログ形式で存在していた情報やプロセスをデジタル形式に変換することを指します。紙の書類をスキャンしてPDFにする、手書きの伝票をExcelに入力する、といった作業がこれに該当します。
この段階では、ビジネスプロセスそのものは変わりません。あくまで情報の記録、伝達媒体を変えるだけであり、業務の流れや意思決定の方法は従来のままです。しかし、この一見シンプルな変換こそが、すべてのデジタル化の出発点となります。
具体的な事例:製造業における設計データの一元化
多くの製造業では、紙の設計図面とExcelで管理された部品表が今も使われているところが多いかと思います。図面は大きなキャビネットに保管され、部品表は各担当者のPCに分散して保存されているケースが少なくありません。
例えば、デジタイゼーションにおいて、まず過去の図面をすべてスキャンしてPDFとして保存し、部品表をデータベースやファイルストレージに保管できるようにします。この取り組みにより、物理的な保管スペースが削減され、図面や部品情報の検索時間が大幅に短縮されます。必要な図面を探すのに30分かかっていた作業が、キーワード検索で数秒に短縮され業務の改善へと向かうことができるのです。
デジタイゼーションの価値と限界
デジタイゼーションの価値は、情報の保存性、検索性、共有性の向上にあります。紙の書類は劣化し、紛失のリスクがありますが、デジタルデータは適切にバックアップすれば半永久的に保存できます。また、キーワード検索により必要な情報をいつでも簡単に見つけられたりと業務の利便性を大幅に向上することができます。
一方で、デジタイゼーションだけでは業務の効率化には限界があります。データがデジタル化されても、それを活用するプロセスが旧態依然としていれば、真の価値は引き出せません。これが次の段階、デジタライゼーションへの移行が必要となる理由です。
デジタライゼーション:プロセスのデジタル化と効率化

デジタライゼーション(Digitalization)は、デジタル技術を活用してビジネスプロセスそのものを変革し、効率化することを指します。単なるデータの変換ではなく、業務の流れ自体をデジタル技術で再設計します。マーケティングオートメーション(MA)による顧客育成の自動化や、工場へのIoT導入による生産管理の効率化など、業務のやり方を変えるのがデジタライゼーションです。
この段階では、ワークフローの自動化、システム間の連携、データの一元管理などが実現され、業務のスピードと精度が飛躍的に向上します。ただし、この段階でもまだビジネスモデルそのものは変わりません。既存のビジネスをより効率的に行うことが目的です。
具体的な事例:製造業におけるデータ基盤の構築
デジタイゼーションの段階では、紙の図面をPDF化し、Excelの部品表をデータベースに移行しました。しかし、これらのデータは依然として部門ごとにバラバラに存在しておりデータのサイロ化が発生しています。設計部門には図面データ、製造部門には生産実績データ、購買部門には在庫データが別々に管理されている状態です。
デジタライゼーションでは、これらの散在するデータを統合したデータ基盤を構築します。設計データ、生産データ、在庫データ、品質データを一元的に管理できるプラットフォームを整備することで、部門を越えた情報共有が可能になります。
例えば、ある製品の設計変更が発生した際、従来は設計部門から製造部門へ紙やメールで連絡していました。データ基盤があれば、設計変更情報が即座に製造部門、購買部門、品質管理部門に共有され、必要な部品の発注や製造工程の調整が自動的に開始されます。
また、データ基盤上で各部門のデータを分析することで、「この製品は設計変更が多い」「この部品は欠品しやすい」といった傾向も見えてきます。こうした知見は、設計の標準化や在庫戦略の改善につながります。
これが典型的なデジタライゼーションの成果です。データを「ただ持っている」状態から、「活用できる」状態に変え、業務プロセスそのものを効率化するのです。
データの一元管理と活用の重要性
デジタライゼーションの段階では、自社データの一元管理と活用が極めて重要になります。従来、部署ごとにバラバラに管理されていたデータを統合することで、組織全体としての意思決定の質が向上します。データを「ただ持っている」状態から、「活用できる」状態に変え、業務プロセスそのものを効率化する。これが典型的なデジタライゼーションの成果です。
総務省の令和5年通信利用動向調査(2024年6月公表)によると、日本企業がクラウドサービスを利用する理由として、「場所、機器を選ばずに利用できるから」(49.5%)が最も高く、次いで「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」(43.9%)となっています。実際、クラウドサービス利用企業の88.4%が「非常に効果があった」又は「ある程度効果があった」と回答しており、データの一元管理と活用の基盤としてAWS、Google Cloud、Microsoft Azure を始めとするクラウドサービスが重要な役割を果たしています。
ただし、データの一元管理を外部のシステムインテグレータなどに丸投げすると、自社でデータの意味や構造を理解している人材がいなくなるリスクがあります。事業ドメインを中心としたデータは企業の重要な資産であり、その構造や活用方法は社内に知見として蓄積すべきです。
デジタルトランスフォーメーション:ビジネスモデルの根本的変革
デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation、DX)は、デジタル技術を活用してビジネスモデルそのものを変革し、新たな価値を創造することを指します。既存業務の効率化にとどまらず、顧客体験の革新、新しい収益源の創出、業界構造の変革までを含む包括的な変革です。
DXでは、企業の存在意義や提供価値そのものが再定義されます。「何を売るか」ではなく「どんな価値を提供するか」という視点で事業を捉え直し、デジタル技術を駆使してそれを実現します。
なぜ段階を踏む必要があるのか
多くの企業が「いきなりDXを実現したい」と考えますが、これは現実的ではありません。デジタイゼーション、デジタライゼーションという基盤がなければ、最終的な目標となるDXは実現できないからです。
まず、デジタイゼーションでデータがデジタル形式で存在していなければ、それを分析して活用することはできません。次に、デジタライゼーションでプロセスが効率化され、リアルタイムでデータが流通する仕組みがなければ、迅速な意思決定や新しいサービスの提供は困難です。
さらに、組織の成熟度という観点からも段階的アプローチは重要です。デジタル技術に不慣れな組織がいきなり革新的なビジネスモデルに挑戦しても、社内に理解が得られず、実行力も伴いません。
特に人材の流動性が低い中小企業などでは、長年慣れ親しんだ業務フローを変えることへの心理的ハードルが高いはずです。「今のやり方で問題ない」という現場の意識や、新しい技術への不安、年配社員のデジタルリテラシー不足なども要因となり得ます。
各段階で一歩ずつ小さな成功体験を積み重ね、デジタル技術への理解と信頼を醸成していくことが、最終的なDX成功の鍵となります。
建物を建てるときに基礎工事が必要なように、DXにもしっかりとした土台が必要です。デジタイゼーションとデジタライゼーションという土台があって初めて、DXという建物を建てることができるのです。
内製化の重要性:変化のスピードに対応するために
では、どのように3つの段階を進めていくのか。単に外注となるシステム会社に丸投げするようであればおそらくシステムの構築や導入できても本質であるDXには到達することはないでしょう。
現代のビジネス環境では、「変化へのスピード対応」がキーワードです。昨今ではChatGPTを始めとする生成AIの登場など、技術の進歩は加速し続け、消費者の行動や期待値も常に変化しています。誰よりも早く変化に対応できる能力が、企業や個人の生き残りを左右する時代になりました。
成功しているデジタルサービス、また大手のECサイトなどでは、1週間に何度もサービスやUIデザインが改善されることは珍しくありません。ユーザーのフィードバックを即座に反映し、データ分析に基づいて仮説を立て、素早く実装してテストする。このサイクルを高速で回すことで、市場のニーズに最適なサービスへと進化させていきます。
従来の「数年かけて完璧なシステムを開発し、一度にリリースする」というウォーターフォール型のアプローチでは、リリース時点で既に顧客のニーズとずれている可能性が高くなります。プロトタイプを短期的にリリースし、仮説が間違っていたらすぐに方向転換する、あるいは他のアイデアに切り替えるというアジャイルな手法によって、投資と損失を最小限に抑えることが必要不可欠です。
外注モデルの限界
多くの日本企業は、システム開発から運用までを外部のシステムインテグレーターに依存してきました。また未だにその依存から離れられない企業も多いことでしょう。しかし、この外注中心のモデルは、アジャイルでスピーディーな経営と根本的に相容れません。
外注モデルでは、サービス変更や機能追加のたびに、要件定義、仕様の確認、見積もり依頼、予算承認、発注、開発、テスト、検収という長いプロセスが必要になります。小さな変更でも数週間から数ヶ月かかることは珍しくありません。
さらに深刻なのは、ビジネスの核心部分である業務知識やデータの意味が、社外に蓄積せずに流出してしまうことです。システムの仕様や構造を最もよく理解しているのが外部ベンダーという状況では、新しいアイデアを実現する際にも、まず外部ベンダーに「それは可能か」「いくらかかるか」を確認しなければなりません。これでは主体的なイノベーションは起こりません。
内製化による競争優位性の確立
内製化の最大のメリットは、意思決定から実装までのリードタイムが劇的に短縮されることです。極端な例では、朝の会議で決まったアイデアを、午後には試作として実装し、翌日にはテストユーザーに試してもらうことも可能になります。
また、業務を最もよく理解している社員が直接システムを開発することで、細かなニーズや暗黙知が自然とシステムに反映されます。外部ベンダーに説明する手間やコミュニケーションロスもなくなり、本質的な課題解決に集中できます。
さらに重要なのは、試行錯誤のプロセスが社内に蓄積されることです。失敗から学んだ教訓、成功のパターン、データの特性など、ビジネスの根幹をなす知見が組織の資産として蓄積されます。これが長期的な競争優位性の源泉となります。
データ利活用と内製化の関係
自社のデータを真に活用するためにも、内製化は不可欠です。データの価値は、それをどう解釈し、どう活用するかという知見と一体であり分離させてはならないものです。外部ベンダーにデータ分析を委託すると、分析結果は得られても、なぜそのような結果になったのか、次にどう活用すべきかという知見は社内に蓄積されません。
データ、特にトランザクションデータは生鮮食品のようなもので、鮮度が重要です。市場の変化、顧客の行動変化に応じて、リアルタイムでデータを分析し、施策を打つ必要があります。外部委託では、この「リアルタイム性」を確保することが困難です。
また、本当に価値のあるデータ活用は、部門横断的な視点から生まれます。営業データ、顧客サポートデータ、製造データ、財務データを統合的に分析することで、新しいビジネスチャンスが見えてきます。しかし、これは自社の業務を深く理解している人材でなければできません。
内製化を実現するための戦略:段階的アプローチとクラウド活用

「内製化が重要なのは分かるが、うちには技術者がいない」というのが多くの企業の本音でしょう。確かに、経験豊富なエンジニアの採用は極めて困難です。特に地方企業や中小企業では、採用市場で大手IT企業と競争することは現実的ではありません。
しかし、この課題を解決する道は存在します。それが、段階的なアプローチによるDX推進と、クラウドプラットフォームの戦略的活用、そしてDXパートナーとの協働です。
スモールスタート:ノーコード/ローコードからの第一歩
最も導入ハードルが低い選択肢として、ノーコード/ローコードプラットフォームの活用があります。
優れたノーコードツールは数多く存在しますが、まず、Microsoft Power Platformをお薦めします。その理由としては、既存のMicrosoft 365環境とのシームレスな統合にあります。多くの企業が既にMicrosoft 365を利用しており、Outlook、Teams、SharePoint、Excelを日常的に使っています。Power Platformは、これらの既存資産を最大限に活用できる点で、他のノーコードツールとは一線を画します。
プログラミング経験がほとんどない業務担当者でも、数週間の学習で実用的なアプリケーションを開発できるはずです。Power Apps(アプリ開発)、Power Automate(業務自動化)、Power BI(データ可視化)を組み合わせることで、身近な業務課題を素早く解決できます。
特に今現在、弊社も注目しているのがMicrosoft Copilot StudioというAIエージェント構築サービスです。Copilot Studioでは、ビジュアルなインターフェースを使って、SharePointなどをデータソースとして読み込ませることができ、それらを情報源としたチャットボットや対話型アプリケーションを構築できます。
例えば、在庫管理エージェントのようなものを作ることができます。「商品〇〇の在庫状況は?」「発注が必要な商品をリストアップして」といった問いかけで、在庫データベースと連携し、リアルタイムな情報提供や発注推奨まで行います。
ノーコード/ローコードの真の価値は、DXへの心理的ハードルを下げることにあります。 小さな成功体験を積み重ねることで、組織全体にDXへの前向きな機運が生まれます。この「小さな一歩」が、本格的なデジタル変革への入口となるのです。
本格的なDX基盤:クラウドインフラの戦略的価値
ノーコードでスタートした企業も、事業が成長し、要件が複雑化すると、より柔軟で拡張性の高いシステム基盤が必要になります。ここで重要になるのが、AWS、Google Cloud、Microsoft Azure といったクラウドプラットフォームの活用です。
従来のシステム開発では、サーバーの用意、OSのインストール、ミドルウェアの設定、セキュリティパッチの適用、バックアップ体制の構築など、アプリケーション本体の開発に至るまでにも膨大な作業が必要でした。これらには高度なインフラエンジニアが必要で、中小企業にとっては大きな障壁でした。
クラウドを活用すれば、これらのインフラ管理の多くをクラウドベンダーに任せることができます。 クラウドベンダーは年間数兆円規模をセキュリティとインフラに投資しており、世界トップレベルの技術者が24時間365日システムを監視しています。このレベルのインフラを自社で構築・運用することは、ほとんどの企業にとって非現実的です。
企業が集中すべきは、差別化につながる部分、つまり自社のビジネスをITを通して提供することと社内外含め優れたユーザー体験の提供です。インフラの心配から解放されることで、本質的な価値を創出にリソースをを集中することができます。
また、ノーコードとクラウドインフラは対立するものではありません。 例えば、業務アプリのフロントエンド(操作するための見た目の部分)はPower Appsで素早く構築し、バックエンド(データ保持、処理、提供などの根幹)のデータ処理や複雑なビジネスロジックはAWSやAzure上で動くシステムで処理する、といったハイブリッドな構成も有効です。
DXパートナーとの協働による段階的内製化
しかし、「クラウドを使えば簡単」というわけではありません。適切な設計思想、セキュリティ設計、コスト最適化など、クラウドを効果的に活用するには専門的な知見が必要です。
またここで、従来の外注モデルのようにクラウドを使ったシステムの構築を依頼するだけでは、内製化は何も進みません。それでは発注側は「何を作るか」を詳細に指定し、受注側はその仕様通りに作ることに責任を持つだけで終わります。真のDXでは、「何を作るべきか」自体が不確実です。仮説を立て、試し、学び、方向転換する。このプロセスを一緒に走ってくれるパートナーが必要です。
理想的なパートナー企業は、以下のような特徴を持っています。
- 技術を提供するだけでなく、ビジネス課題から一緒に考えてくれること。
- 成果物の納品で終わりではなく、運用改善まで伴走してくれること。
- 知見やノウハウを自社に移転し、徐々に内製化できるよう支援してくれること。
- 失敗を責めるのではなく、学びとして次に活かす文化を共有できること。
つまるところ、DXパートナーとの協働による段階的な内製化アプローチが必要になってくるのです。
フェーズ1:パートナー主導期
最初はDXパートナーが設計・構築・運用をリードします。この段階で、クラウドネイティブな設計思想や、技術的負債を生まない開発手法など、本質的な知見を社内に移転していきます。
フェーズ2:協働期
徐々に社内チームがパートナーと並走する形で開発に参加します。ペアプログラミングやコードレビューを通じて、実践的なスキルが身につきます。同時に、AWS、Google Cloud、Azureの各種サービスの使い方、運用ノウハウも蓄積されていきます。
フェーズ3:自走期
最終的には社内の技術者が主導し、パートナーはサポート役に回ります。この段階では、新機能の開発や日常的な運用を自社で完結できるようになっています。パートナー企業は必要なときにコンサルティングを提供する関係へと移行します。
この過程で重要なのは、単に「システムを作る」のではなく、「システムを作れる組織を作る」ことです。技術的な知見、開発プロセス、品質管理の方法論、これらすべてが組織の資産として蓄積されることで、真の意味での内製化が実現します。
DXパートナーの役割は、外部ベンダーとして永続的に依存関係を作ることではなく、最終的に自社で自走できる体制を構築するまでを支援することにあります。これはResonalがミッションの中で重要視してることであり、これこそが、持続可能なDX推進の鍵となります。
日本企業が取るべき行動
デジタル化は一朝一夕には実現しません。自社の現状を正直に評価し、課題を洗い出し、デジタイゼーション、デジタライゼーション、DXというステップを着実に登っていくことが重要です。
まだ紙ベースの業務が多く残っている企業は、まずデジタイゼーションに集中すべきです。ただし、単にデータをデジタル化するだけでなく、次のステップを見据えて、データ構造を設計することが重要です。
すでにある程度デジタル化が進んでいる企業は、デジタライゼーションに取り組みます。部門間でバラバラに存在するデータを統合し、プロセスを自動化・最適化します。この段階で、自社のデータを資産として活用する基盤が整います。
そして、デジタル基盤が整った企業は、いよいよDXに挑戦します。ビジネスモデルの革新、新しい顧客価値の創造に取り組みます。ただし、これは終わりではなく、継続的な進化のプロセスです。
内製化への投資を惜しまない
内製化は、短期的にはコストがかかります。既存社員の研修、新しいツールやプラットフォームへの投資、試行錯誤の時間。しかし、これらは将来への投資であり、企業を次の世代に引き継いでいくため、更なる成長のためには不可欠であり、最終的には長期的には大きなリターンをもたらします。
日本企業のクラウド支出予想が8%にとどまる一方で、アメリカは22%超、ヨーロッパは16%という大きな差は、単なる技術投資の差ではなく、将来への投資姿勢の差を表しています。日本企業の多くが内製へと大きく方向転換することは、もはや選択肢ではなく、生き残りのための必須条件です。
文化と組織の変革
技術やツール以上に重要なのが、組織文化の変革です。失敗を許容し、素早い試行錯誤を推奨する文化。部門の壁を越えてデータや知見を共有する文化。経営層が率先してデジタル技術を学び、活用する姿勢。
また、IT部門を「コストセンター」ではなく「価値創造の中核」として位置づけることも重要です。IT部門と事業部門が対立するのではなく、一体となって事業の成長を目指す組織構造が必要です。
おわりに
デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションは、単なる技術導入の段階ではありません。それぞれが組織の成熟度を示す重要なマイルストーンであり、次の段階への基盤となります。
日本企業がグローバル競争で生き残り、成長するためには、この三つのステップを戦略的に登っていく必要があります。そして、そのためには内製化が不可欠です。変化のスピードが加速する現代において、外部に依存したままでは、意思決定から実行までのスピードで競合に後れを取ってしまいます。
幸いなことに、IaaSやローコード・ノーコードツールの進化により、内製化のハードルは大きく下がっています。Microsoft Azure、Google Cloud、AWS といった強力なプラットフォーム、Copilot Studioのような革新的なAIツールを活用すれば、既存社員のスキルアップによる内製化という道筋が現実的になっています。
もちろん、すべてを一度に実現する必要はありません。信頼できるパートナー企業と協業しながら、徐々に内製化を進めていくアプローチも有効です。重要なのは、「変化への対応力」を自社の中に構築するという明確な意志を持つことです。
IMDのデジタル競争力ランキングで31位という厳しい現実は、同時に大きな成長余地があることも意味しています。日本企業が本気でデジタル化に取り組めば、日本経済をより発展させ、世界における競争力を取り戻すことは十分に可能です。
今こそ、デジタイゼーションから始まる変革を進めてみてはいかがでしょうか。まずは生成AIを活用したコアな課題解決や、AIエージェント構築による業務効率化から着手することをおすすめいたします。これらは比較的取り組みやすく、短期間で効果を実感できるため、組織全体のデジタル化への機運を高める発火点となります。
一歩ずつ着実に行なっていけばデジタル時代における新しい競争優位性を築くことができるでしょう。