AI時代のデータ活用|ExcelからETL・DWHまで、必要な仕組みの選び方
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企業が社内データや過去のナレッジを活用しようとすると、ETL、DWH、CDPなど、さまざまな製品や概念に行き着きます。いずれも必要になる場面はありますが、データ活用を始めるために、最初から大規模な基盤を作る必要があるとは限りません。
実際の現場では、必要な情報がExcelにすら整理されていないケースがある一方、現在の業務に対して仕組みが大きくなりすぎているケースも散見されます。重要なのは、会社の規模や製品名から考えることではありません。扱うデータの性質と、実現したい業務から考えることです。
データ活用で起きている二つの問題
データ活用が進まない理由は、単にツールが不足しているからとは限りません。そもそも利用できる形でデータが整理されていない場合もあれば、反対に、課題に対して必要以上に複雑な仕組みを作ってしまっている場合もあります。

AI以前に、データが構造化されていない
生成AIが当たり前に使われるようになっても、顧客情報や作業履歴が、メール、PDF、担当者ごとのファイルに散らばっている企業は珍しくありません。AIは、請求書から金額を抽出する、問い合わせを分類する、文章を要約するといった曖昧な処理に向いています。
しかし、読み取った結果を一覧表やデータベースへ保存しなければ、継続的な集計や分析には使えません。まず必要なのは、高度なAI基盤ではなく、業務に必要な情報を一つの表にまとめることかもしれません。その途中の読み取りや分類をAIに手伝わせるだけでも、十分に価値があります。
反対に、仕組みを作りすぎることもある
一方で、社内の仕組みが現在の業務に対して大きすぎることもあります。たとえば、月に数百行程度のデータを加工し、最終的にはExcelで確認・共有するだけなのに、専用サーバーやデータウェアハウス、複数の連携処理を運用しているようなケースです。もちろん、将来的にデータ量が増える、複数の用途で再利用する、厳密な履歴管理が必要といった事情があれば合理的な判断となるでしょう。
しかし、現在の用途が月に一度の集計や定型的な資料作成に限られているなら、簡単なプログラムや小さなデータベースに置き換えられる可能性があります。一度作った仕組みは、そのまま使い続けることが前提になりがちです。しかし、現在もその構成が必要なのか、同じ成果をもっと簡単に得られないかは、コストや運用の観点からも定期的に見直すべきです。
技術的に高度な構成や製品が、必ずしも事業にとって適切とは限りません。
道具ではなく、業務とデータから考える
適切な仕組みを選ぶには、最初に製品カテゴリを決めるのではなく、現在の業務とデータの性質を整理する必要があります。ETLやDWH、Excelなどは目的ではなく、それぞれ異なる役割を持つ道具です。何をどこまで任せるかによって、必要な構成は変わってきます。

ETLは製品ではなく処理の名前
ETLとは、複数のシステムやExcelファイルなどからデータを取得し、表記ゆれの修正や名寄せ、重複の削除、項目形式の統一などを行い、分析や業務で利用できる形に整えて保存先へ渡す一連の処理の呼称です。たとえば、「株式会社ABC」「(株)ABC」「ABC社」と別々に登録されている顧客情報を同一企業としてまとめ、電話番号や住所の形式を統一したうえで、データベースやExcelへ保存する、こうした処理を担うのがETLの役割です。
しかし、その処理に、必ずしも大規模なETL製品が必要なわけではありません。企業向けのETL製品が有効になるのは、多数のシステムへの接続、定期実行、エラーの検知と再実行などを、継続的に運用する必要がある場合です。また、ETLはその製品の特性上、製品によっては、SQLや接続設定、データ設計などの知識が必要になります。そのため、扱える人材がいないまま導入し、十分に活用できていないケースもあります。小さなデータ処理と、大規模なETL製品の導入は分けて考える必要があります。
Excelの問題ではなく、業務設計の問題
「脱Excel」という言葉もよく使われますが、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフト自体が必ずしも悪いわけではありません。少量のデータを確認・修正する、試しに集計する、最終成果物として表を共有する、といった用途では非常に優れています。
問題になるのは、Excelに過度な責務を持たせることです。一つのファイルに、データの入力、保存、集計、承認、履歴管理、権限管理、帳票出力まで押し込めれば、当然メンテナンスの難易度が跳ね上がります。高度な計算や帳票出力を担うマクロ付きのExcelファイルが残っているものの、作成者が退職し、誰も保守できないといった状態も珍しくありません。
これはExcelの性能というより、業務設計の問題です。すべてをExcelから置き換える必要もありません。たとえば、正しいデータの保存はデータベースに任せ、定期処理はプログラムで実行し、人が確認・修正する画面や最終的な出力としてExcelを残す方法もあります。
必要なのは「脱Excel」ではなく、Excelに何を任せ、どの責務を別の仕組みへ切り出すかを決めることです。
会社の規模より、データの性質を見る
データ活用に必要な仕組みは、従業員数や売上規模だけでは決まりません。重要なのは、データがどのように発生し、どれくらい増え、何に使う予定なのかです。たとえば、管理対象が顧客マスタで、件数が少なく、更新も年に数回程度なら、大企業であっても大規模なDWHは不要かもしれません。
Excelや既存の業務システム、簡易的なデータベースで足りる可能性があります。Microsoft 365を中心に利用している企業なら、Dataverseも選択肢です。Power Platformで業務フローを作ったり、Copilotなどからデータを参照したりする構成にも広げられます。
反対に、小規模な企業でも、ECのようなサービスを運営している場合、注文、決済、入出庫、問い合わせ、広告、アクセスログなどが日々発生するなら、DWHやデータパイプラインの必要性は高くなります。取引やイベントのたびにデータが追加され、長期間の履歴を残し、複数の軸で集計する必要があるためです。
見るべきなのは会社の大きさではなく、データの発生量、必要な鮮度、履歴の必要性、接続するシステムの数です。
小さなデータ活用から始める
大規模な仕組みが必要かどうかは、実際にデータを集め、使ってみなければ分からないこともあります。最初から全社データ基盤のような完成形を目指すのではなく、事業の指標を確認できる小さな仕組みを作り、用途が広がった段階で拡張するほうが現実的です。

最初は簡単な集計からでいい
顧客データを活用したい場合も、最初からCDPのような大きめのシステムを導入する必要はありません。
一方で、Google AnalyticsやCRMの標準画面を見るだけでは、何を確認すればよいか分からないこともあります。まずは、流入数、問い合わせ数、商談数、受注数、売上など、事業に必要な数字を集計し、BIツールなどで定期的に確認できる状態を作ることからでも始められます。
その結果、店舗やアプリのデータも統合したい、顧客単位で施策を出し分けたい、作成した顧客層を複数のシステムへ配信したいといった必要性が見えてきた段階で、初めてCDPを検討すればよいでしょう。小規模な処理であれば、既存ツールや小さなプログラムを組み合わせ、段階的に内製で仕組みを育てる方法もあります。
まずは小さく集計してみることで、何のためにデータを統合するのかも明確になっていくはずです。
必要な一つの表から始める
データ活用を始めるとき、最初に製品カテゴリを見比べていきなり導入しようと決める必要はありません。まず、どの業務や判断を改善したいのか、そのためにどのデータが必要なのかを決めます。
必要な情報を一つの表にする。文章やPDFの読み取りにはAIを使う。繰り返し作業は小さなプログラムで自動化する。複数人で管理する必要が出たら、簡易的なデータベースへ移す。それでもデータ量、接続先、利用部門が増え、継続的な更新や共通指標の管理が必要になった段階で、本格的なETLやDWHを検討すればよいでしょう。
データ活用で大切なのは、最初から立派な基盤を完成させることではありません。業務設計を整理し、現在の課題を解決できる最小限の仕組みから始める。それが、多くの企業にとって現実的な進め方です。

Resonal編集部
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